
今回は終わりも近づいたので、とっ散らかった問題を大急ぎで片付けてしまおうという一編。
前回に引き続いて、怪しい浪人を尾行して行ったおこんが、当たり前だがあっさりと捕まってしまう。
それを、わざわざ矢文(古い!)で今津屋に知らせ、磐音が押っ取り刀で駆けつける。
刺客の木幡闇斎と例によって刃を返して闘い、手首の骨を折るか何かしてこれを斃すが、哀れ木幡闇斎は「ザカザキ イワネェ〜」(この男、独りだけ別世界にいる雰囲気)の怪獣が放った十字手裏剣であっけない最期。
見れば、背中に僅かに刺さっただけの手裏剣で、すぐに絶命するかとの疑問は残るが、まあそれはよい。
おこんを助け出した磐音は、いきなり頬を張り飛ばして、
「そなた、いつから地蔵の親分の手下になった。みんながどれほど心配していたか分かっているのか」
おこんは、いきなり泣き出して「浪人さん、ごめんよ。ごめんよ」
・・・あ、いや。これは幸吉の話だった。
しかし、おこんに幸吉と同じようなことをさせちゃいけねえな。
一方、尚武館道場の増築資金を出したこともなく、日光社参もなく、仲人も頼んだ覚えもない今津屋は、それほど親しくもない佐々木玲圓と速水左近に呼び出される。
なんと、珍しくも左近が上座に座っている。
ただ、玲圓は相変わらず「速水どの」などという呼び方で朋輩以下の扱い。
左近は「おこんを養女にしたい」と言い出し、「文句があるか」とでも言いたげな感じ。
なにしろ、「陽炎」では日光社参の資金を提供して貰った負い目もないので左近も強気である。
どうしても磐音とおこんを今津屋に取り込みたいらしい由蔵は難色を示す。
「不服かな」と問われて、由蔵は「滅相もない」と答える。
相手は上様御側衆、つまり両替屋の奉公人如きにとっては雲の上の人に対して無礼千万。
「滅相もございません」であろう。
二人は、その話を持ち帰って磐音とおこんに告げる。
つまり、玲圓は当人たちにも話をしないで、いきなり赤の他人である今津屋に言ったらしい。
常識外れというか左近と玲圓、一体この二人は何を考えているのか。
ここでも由蔵は「坂崎さまやおこんさんを武家に取られて悔しい」などと訳の判らないことを言って泣き出す。
この男、何を考えているのか、外様とは申せ豊後関前藩6万石の国家老の嫡男を今津屋の手代にしようとでも思うたか。
どうも、この由蔵は最初の頃にも書いたが悪人めいていてイメージが違う。
最近は、特に目つきも険悪になってきた。
さて、当のおこんである。
武家の養女、しかも幕府要人の家となると、またまた悩み始めるかと思いきや、あっさりシャッキリと承知してしまう。
ついでに関前行きも決めてしまう。
え? 先週までのグチョグチョは何だったのか。
回数も少ないので、悩んで鬱々としている暇などないか。
おこんの決心を聞いても、「よう言いました。それでこそ今津屋を切り盛りしてきたおこんです」とも言わないし、「お佐紀、おこんにもそなたにも盃をな、お祝い事です」などという雰囲気は何処にもない。
それどころか、そういうことなら「今津屋を辞める時ですぞ。わかっていますか」と、お前はクビだと言わんばかりの言い種。
こっちの今津屋吉右衛門、養子だの養女だのにはどうにも我慢がならないらしい。
とにかく、あっちを片付け、こっちを整理しと目まぐるしく動く。
柳次郎と椎葉お有も目出度きことがあったことにし、ついでに三味芳も早々と開店してしまう。
この分では照埜と会っても案ずることはなく「おこんさん、よう関前まで来られましたな」の一言で、わだかまりは一気に氷解するかも知れない。
メデタシメデタシで、4人が橋の上でのんびりと空など眺めている。
ここで、おこん、「お有さん」ではなかろう。
相手は武家娘、「お有さま」と呼ぶべきだ。
そなたも、いずれは「おこんさま」と呼ばれる身分になる。
どうも今津屋の奥向きで奉公していたにしては言葉遣いがよくないぞ。
エンディングは「束の間の安らぎであった」となる。
しかし、安らいでいる場合ではなかろう。
養女の話にしろ、関前行きの話にしろ、金兵衛へ報告しておかないと、こんどは巾着を振り回す程度では収まるまい。